会社に勤めていた頃、研修で、お客様対応の実技訓練があった。ようは、ちょっと無理なことをお客様(お客様役の同僚)が従業員である私に要求し、それをどうこなすかということ。
心清らか、純真無垢な私は、「無理です。できません」とあっさり答えた。
怒られた、それでは話が終わってしまうだろう、もっと愛想よく理解して貰えるように言えということだ。
私は、お客様も無理を承知で言ってんだから、あれこれ、言わずに「無理です」の一言で済ませばいいやん、という考えだったので、そうご返事申し上げたのだけれど。
さて、つい先日、事故の修理で、保険をああだこうだとうまくやってくれという、ちと、問題ありの要望をお客様から受けた。
そんな難しいこと出来ません、とあっさり答えると、気色ばんで、やってくれる業者もあるぞとおっしゃったので、うちは出来ない側の業者ですねと答えた。エンジン音、大き目でご帰宅、もしくは、他の整備業者へと向かわれたのだろう。
難しい作業を頑張ってやろうというのはありだ。でも、こういう、不正っぽいことや、相手の我欲による要求はちょっとでも受けるような隙を見せると、どんどん、自分自身を苦しめてしまう。
自分を苦しめる。
多分、弱みでも掴まれていたのだろう。
弱みの元になる最初のつまずきを回避していれば、断れただろうと思う。
妙な色気は持たないことだ。