物部自動車工業 店主の日記 普段着の文章

京都市西京区で車検整備の認証工場の店主です.趣味や思いつきを書いています.

特に読んでいただきたい記事
  1. 命は大切ですかと問えば

普段着文庫上里北 「苦海浄土」 石牟礼道子

普段着文庫上里北 「苦海浄土石牟礼道子
ここしばらく文庫案内文を書くため、灰谷健次郎ばかり読みまして、大人の悪人である私は、彼に責められ、なかなかにきつい。
兎の眼」や「太陽の子」、他の長編やエッセイも後日ということで。

石牟礼道子、「苦海浄土」は企業チッソが排出し続けた有機水銀により、水俣病に罹患した人たちの記録です。
いや、記録という言葉は適切ではないかもしれません。
彼女の書いた「苦海浄土」は、大宅壮一ノンフィクション賞に選ばれましたが、その賞を彼女は辞退しています。
それは、本当の著者は水俣病に罹った患者一人一人であると思っていたからではないかとされています。
水俣病がどれほど非道な公害病であるのか、チッソチッソの技術者が有機水銀が病気の原因であると認識した上でも有機水銀を海に流し続けた、人間とはいったいどういう存在なのかと考えさせられます。

第三章 ゆき女(じょ)きき書き もういっぺん人間にもどりたい 

こんな辛い言葉があろうかと思いますぅ。
石牟礼道子を評した本の一つに、白黒写真がありました。

道のまんなか、石牟礼道子大漁旗を振り上げ仁王立ちにぐっと立つ姿で。
彼女は外側から記録するのではなく、まさに内側に入り、語り部となった姿だろうと思います。

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